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専門ゼミナール「井上ゼミナール中間報告会2026」を開催いたしました

  • 社会福祉学部

2026年10月27日(火)、本学9号館リブロホールおよびオンライン配信のハイブリッド形式にて、専門ゼミナール「井上ゼミナール中間報告会2026」を開催いたしました。  

本報告会は、学生たちが日々積み重ねてきた研究成果を学内外に広く発信し、現場で活躍する専門職の皆様や地域の皆様との対話・交流を通じて、新たな知見や多角的な助言を得ることで、学びをより深く精査することを目的としています。当日は、児童相談所の現場職員、研修機関をはじめとする専門職の方々、さらには大学院生や本学との高大連携の高校生など、多数ご参加いただきました。

【研究発表の内容】

【4年生】

テーマ:若年層妊産婦への支援に関する調査 ―『HELPING THE BATTERED CHILD AND HIS FAMILY』との照合を通して―

昨年度の若年出産・乳児遺棄事件に関する調査を発展させ、児童虐待理論の先駆的著書であるKempeらの(1972)『HELPING』をもとにして抽出した概念(世代間連鎖、見捨てられ不安、支援方法)を分析基準として整理。インタビュー調査から得た逐語録をデータ化・コード化し、理論概念との照合を行いました。その結果、現場の多職種連携における「共通の参照軸」構築の必要性や、各機関の役割に応じた支援意識の違いと課題を浮き彫りにしました。 

【3年生】

テーマ:児童虐待における世代間連鎖における愛着形成の必要性について

被虐待経験を持ちながら世代間連鎖を断ち切ることができた事例と、できなかった事例の比較分析を実施。成育歴における周囲(担任や支援者など)とのつながりや、我が子に対する愛着形成の有無が世代間連鎖に与える影響を整理し、現在・将来の福祉現場で実践可能な「親の愛着形成を促す支援アプローチ」の可能性を考察しました。  

テーマ:被虐待児にみられる傾向とその予防に関する研究

ネグレクトを受けた子どもが非行へと至る背景や心理的・発達的要因に着目。ネグレクトを単なる保護者の怠慢ではなく「養育者自身が抱える困難や知識不足」も含めて捉える包括的な概念を提案しました。子どもが安心できる居場所作りや早期変化の把握、多職種連携による予防策の提示を行いました。

テーマ:虐待予防教育の実践と効果

虐待が発生した後の対応にとどまらず、未然に防ぐ「予防教育」の重要性に着目。高校生を対象としたオリジナルワークブック(体のしつけとコミュニケーション、子どもの権利条約など)を活用した授業と意識調査の計画を発表し、若年層からの虐待予防教育が将来的な早期発見やリスク低減にどう貢献するかという仮説と展望を示しました。

テーマ:児童虐待を防ぐための支援のあり方

子どもの安全と権利を最優先としつつ、虐待という結果のみならず、保護者の孤立や困難な生育環境など背景にある構造的要因に着目しました。日米における法的な虐待定義の比較を通じ、不適切な養育全般を捉える「マルトリートメント」の視点を提示。親個人への責任帰属にとどまらず、困難を抱える前段階での家庭訪問や地域連携など、社会全体で子どもと家庭を支える予防的支援の必要性を論じました。

【参加者からの感想と今後の展望】

「インタビュー調査から逐語録を作成し、概念を丁寧に抽出し整理する作業は膨大な手間と時間がかかったと想像されます。領域間において概念を比較する分析方法は、全体像の把握として非常に分かりやすく、主張の根拠も明確になっており、素晴らしい研究内容だと感じました」

 
「非行や世代間連鎖といった問題において、長年当事者が抱えてきた苦痛(本人がそれを虐待と認識しているか否かにかかわらず)を『自分ごと』として想像してみることで、なぜその状況に至ってしまったのかをより深く理解することができました」

 
参加者の皆様からいただいたこうした貴重な視点や分析へのフィードバックは、学生たちにとって日頃の研究の価値を再確認する大きな励みとなると同時に、今後のポスター発表や卒業研究の完成度を高める上での極めて重要な材料となりました。 専門ゼミナールでは、今後も地域社会や専門機関との連携を密に保ちながら、実践的かつ根拠に基づいた子ども虐待に関する研究の推進に取り組んでまいります。

 
最後になりましたが、ご多忙の折、インタビュー調査等にご協力・ご支援を賜りました関係施設・機関の職員の皆様、ならびに当日ご参加いただき温かいご助言を寄せくださった皆様に、心より深く感謝申し上げます。

教員紹介

准教授

井上 景

イノウエ タカシ

所属

社会福祉学部、大学院 総合福祉学研究科

総合福祉学研究科発達支援学専攻