小口浩美さんは、がん当事者・遺族として、がん教育の推進活動や講演活動、語り合いの会を展開されています。今回「がんで考える医療と福祉の当事者視点」をテーマに、社会福祉士の実習を控えた主に3年生対象の「保健医療と福祉」の授業(2025.7.16)にお招きしてお話をお伺いしました。
がん患者としての告知から治療、副作用、精神的な苦しみや孤独感、恐怖までの経験とともに、がんを通じて命の大切さに気づき、使命感が芽生えたこと、日野原重明氏の言葉を引用し、命の時間の使い方を考えることの重要性が語られました。また、がん患者が治療と仕事を両立できる社会環境の現状や偏見のない共生社会の必要性、家族の気持ちや支え合いの大切さが語られ、がん患者はひとりで生きていないことが示されました。治療後のひとり旅や社会参加、がん教育講師としての活動、地域を超えたつながりの形成が紹介され、専門職を目指す学生に対して「つなぎ人でいてほしい」とメッセージをいただきました。
受講者からは、「小口さんが当事者として発信し、制度化につなげた行動力に感銘を受けた」「がん教育の大切さと大切な人としっかり話し合うことの重要性を学んだ」「私も周りの人への感謝や思いを伝えることを忘れず、誰かのつなぎ人になれればと感じた」など、前向きな感想が多数寄せられました。また、今後の学習意欲を高めるきっかけになったとの声もありました。
小口浩美さんの講義は、がん当事者の経験・心情の伝達にとどまらず、受講者自身が主体的に考え、成長できる機会となりました。今後もこのような学びの場を継続して提供していきたいと考えています。
文責:鈴木由美子
教員紹介
准教授
鈴木 由美子
スズキ ユミコ
所属
社会福祉学部、大学院 総合福祉学研究科
総合福祉学研究科社会福祉学専攻博士前期