街を歩いていると、ふと立ち止まることがあります。「なぜこんなに素敵なのに、誰にも知られていないのだろう」——そんな感覚、みなさんにも覚えがありませんか。お気に入りの小さなお店、地元のお祭り、毎日見ているはずなのに気づかれていない風景。そこには、まだ誰にも届いていない魅力が、静かに眠っています。
私はもともと企業でクリエイティブディレクターとして、商品やサービスを「どう伝えるか」を考える仕事をしてきました。そこで痛感したのは、どれほど良いものでも、伝わらなければ存在しないも同然だということ。その経験が、今の研究の出発点になっています。現在はポスターや映像、イベントのデザインを通じて、地域や社会に眠る魅力を届けるソーシャルデザインの研究に取り組んでいます。八王子芸術祭2025では、この街の織物産業の記憶をモチーフにしたビジュアルをデザインしました。一枚のポスターが、まちの記憶と人をつなぐ入口になる——そんな可能性を、実践の中で探っています。
私が大切にしているのは、「まず手を動かす」ことです。考えてから動くのではなく、つくりながら考える。実際に形にしてみると、計画の段階では気づかなかった問題やアイデアが、自然と浮かび上がってくるのです。会場に人が集まり、デザインが空間の中で息づく瞬間を目にしたとき、「伝わった」という手応えを感じます。デザインとは、美しいものをつくる技術ではなく、人と人、人と社会をつなぐ言葉だと思っています。みなさんの身のまわりにも、まだ気づかれていない魅力が、きっとあるはずです。

八王子芸術祭2025 メインビジュアル。八王子の織物産業の記憶をモチーフに、地域の文化を一枚のポスターに込めた。
写真提供:アトリエ・アンソロポロジー

芸術祭の会場に集まる人々。デザインが空間に息づき、まちと人をつなぐ瞬間。
写真提供:アトリエ・アンソロポロジー
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講師
鄭 呟采
チョン ヒョンチェ
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共創情報科学部