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マツタケ再興プロジェクト─マツタケ菌の存在把握に向けた土壌調査─

  • 共創情報科学部

前回の基礎調査に続き、マツタケ再興プロジェクトの一環として、対象林におけるマツタケ菌の分布状況を把握するための調査を実施しました(2026年5月1--3日)。今回は、北海道大学 林産製造学研究室の元田助教の協力のもと、土壌サンプルの採取を通じて、マツタケ菌の存在を調査しました。調査には共創情報科学部1年生の加藤百々李さんも協力してくれました。

調査の様子

調査の目的

本プロジェクトでは、マツタケの発生環境の回復をひとつの契機として、管理放棄が進む森林に対して地域住民が再び関心を持ち、森林との関わりを取り戻すことで、住民参加型の森林管理モデルの構築を目指しています。

前回は、ドローン計測などで対象林の構造や状態を把握する基礎調査を実施しました。本調査は、マツタケの発生に関わる菌の存在に着目し、土壌中に存在する生物的な要素を把握することを目的に実施しました。

森林の物理的な環境だけでなく、土壌中の菌類を含む生態学的要素をあわせて評価することで、森林の価値を多面的に捉えることを目指しています。

調査林内で発見した白色腐朽菌(左)と褐色腐朽菌(右)。

いずれも木材を分解する菌類であるが,木材を分解する仕組みが異なる。

マツタケ菌の特性と調査

マツタケ菌(Tricholoma matsutake)は担子菌という菌類で、担子菌は有性生殖の過程において胞子を形成・散布するための構造として子実体(いわゆるキノコ)を形成しますが、子実体の形成は生活環の一過程であり、それ以外の時期には、環境中において菌糸が集まった菌糸体として存在しています。マツタケ再興プロジェクトでは、アカマツ林におけるマツタケ子実体の発生を目標の一つとして掲げています。その前段階として、対象となるアカマツ林にマツタケ菌糸体が存在しているかどうかを確認することを計画しています。

マツタケ菌は、アカマツの細根に侵入して菌根と呼ばれる構造を形成します。この菌根において、アカマツが光合成によって生産した養分の一部が菌へ供給され、マツタケ菌の成長に利用されます。そのため、マツタケの発生には、まずマツタケ菌がアカマツの根と共生し、菌根を形成することが必要となります。そこで今回は、前回設定した対象林内の対照区および管理区において、地表の落葉層直下の一定深度(10〜15 cm)の土壌を採取し、アカマツの根に菌根が形成されているかどうかを調査しました。

管理区で採取した土壌サンプル

サンプル右下黄丸部分に菌糸のような構造を確認

学生参加によるフィールドワーク

本調査では、共創情報科学部1年生の加藤さんも参加しました。実際に森林に入り、土壌の採取作業を体験することで、大学での学びがどのように現場と結びついているのかを実感する機会となりました。また、調査を通じて、森林環境やマツタケの発生条件について理解を深めるとともに、森林資源を適切に利用・管理していくことが、自然環境の保全や地域資源の持続的活用につながることを学ぶ機会となりました。

加藤さんの感想です。

「マツタケをはじめとしたキノコの発生条件について理解を深めることができ、また森林が抱える課題についても知ることができました。実際に現地で学ぶことで、非常に貴重な体験となり、参加して良かったと感じております。」

 土壌サンプル採取の様子(左:加藤さん,右:元田さん)

マツタケ再興プロジェクトの未来

マツタケ再興プロジェクトは、単にマツタケの発生を目的とするものではありません。かつて地域住民の営みと密接に関わっていた里山や自治会林が、現在では利用や管理の機会の減少により、地域との関わりが希薄になりつつあります。本研究では、マツタケ菌の存在や森林環境の価値を可視化することで、地域資源としての森林の新たな価値を見出し、再び住民の営みの中へ森林を位置づけることができるのかを検討しています。これは、森林管理のあり方や地域資源の持続的活用を考えるうえでも重要だと考えています。今後は、今回採取した土壌サンプルの分析を進めるとともに、マツタケ菌の存在を森林の潜在的価値として評価し、森林と地域社会との新たな関係性の構築に向けた検討を進めていきます。

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