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森ゼミナールが企業イノベーション研究の成果を地域企業に発表しました【竹花様】

  • 企業情報学部

ここまでイノベーション研究を進めるにあたり、さまざまご協力をいただいた竹花様

竹花社長とチームリーダーの内藤君

企業情報学部の森ゼミナールでは、「企業イノベーションプロジェクト」と題し、イノベーション論やマーケティング論、経営戦略論などの理論研究を基礎にして、食品、飲料、製菓、メーカー、ホテル、化粧品、サービス、アパレル、流通小売、銀行・金融などの地域企業の問題解決活動(コンセプトの策定や商品・サービスのデザインなどの価値創造活動)を推進しています。

森ゼミ第6チームは、上田地域に根付きながら文房具を専門に事業を展開されている竹花様(上田市)のイノベーション研究を推進しており、11月のヒアリング調査をもとにここまで検討を重ねてきました。この度、同社へ向けてその成果を最終発表しました。

訪問日

2025年2月10日 13:00~14:00

訪問先

株式会社竹花(上田市)

訪問先で対応いただいた方

代表取締役竹花和彦様、奥様、息子様、同社の社員の皆様

取材していただいた方

信濃毎日新聞上田支社 福田様

当日の様子は、信濃毎日新聞社様より信濃毎日新聞デジタルにて発信いただいています。

訪問したメンバー

6班 小林大希、依田千夏、清水美月、高原大河、内藤武、馬屋原美涼、仁科静七、丸山奈々羽

提案報告の概要

今回の最終発表では、以前行ったヒアリング(11月4日)を踏まえ、伊丹敬之氏の「経営戦略の論理」をもとに、竹花様の経営状況に当てはめながら、経営戦略の最終提案報告を以下のように行った。

発表の概要

1.森ゼミナールの活動概要
2.文房具業界の現状
3.上記を踏まえた竹花様の現状
4.戦略の概要
5.まとめ

竹花社長様や息子様

奥様にも発表をお聞きいただき、今後の事業展開に向けてコメントを頂戴しました

それぞれの検討してきた内容とともに、その根拠や今後の展開に向けた思いを語ります。

1.森ゼミナールの活動概要
企業として、顧客の求めるものを提供し続ける受動的な取り組みを続けていれば、継続して競争優位を持つことは難しい。また、ライバル企業との動き・取組みを重視し,高機能・高品質なものを追及し続けることに注力すると、本来の価値提供の対象である顧客に対しての焦点がぼやけてしまい、こちらも持続的な競争優位にはつながりづらい。

だからこそ、顧客の求めるものを提供する受動的なものから、顧客にして欲しい思いを根本に持ち、製品やサービスを通じて顧客に伝える能動的なものへとしていかなければならない。以上より、私たち森ゼミナールでは、成熟期にある地域企業の課題発見と解決に取り組み、企業のコンセプトや商品サービスの提案を顧客にして欲しい思いを軸に行っている。

戦略策定においては、企業の外から見える業績値である“目標”、その目標達成のためにどのような事業を行っていくかの指針となる“ありたい姿”を設定する。現状の姿からありたい姿を目指す上で、発生する課題を解決しながら“変革のシナリオ”(=経営戦略)を考える。その際に生まれる課題を解決するような製品、サービス案を考える。2024年度の取り組みにおいては伊丹敬之氏の「経営戦略の論理」を参考に戦略の策定を行った。

2.文房具業界の現状
現在、文房具業界は、デジタル化による文房具離れ及び需要が減少していること、文房具の品質・機能等技術の成熟により、製品自体の差別化が困難であるという2つの課題を抱えている。よって現在の文房具業界には、既存の文房具の需要に応えるだけではなく、新たに文房具が欲しくなるような取り組みが求められている。

3.上記を踏まえた竹花様の現状
竹花様は上田地域に根付いた事業展開をしており、わずかな需要も拾い上げながら、地域に必要とされるものを提供しつづけることを大切にしており、一般的な事務用文具からニッチなものまで、豊富な品揃えを誇る。また、具体的に買いたい商品がイメージできない場合でも、従業員に相談することで、その知識と経験から最適な商品を見つけることもできる。以上から、私たちは竹花様が顧客に与えている価値を、「求めていた文房具との出会い」、「文房具の相談窓口」の二点と定義した。

しかし、業界を踏まえると、圧倒的な品ぞろえを価値とする他社の存在や、ECサイトの発達により、ただ需要に応えるだけでは、他社に勝つことは難しい。また、これまで竹花様が取り組んでこられたtoB事業では、電子化により需要の減少が著しい。ヒアリングと提案によるtoC事業の販売形態についても、ある程度、竹花様や従業員との関係性が構築されている必要があるため、顧客に価値と捉えてもらうにはハードルが高いと考える。そのため、既存の2点の顧客価値に加え、「文房具が欲しい」というきっかけを、新たな顧客価値として組み込む必要があると考えた。

新たな顧客価値が受け入れられているかの指標として、客単価の増加が挙げられると考え、目標を“毎年の顧客単価を前年より増やす”と設定した。また、将来的に、悩みを抱えている顧客が文房具を使用し、竹花様のサポートによって悩みを可視化することで、文房具に対する価値を「かくための道具」でしかなかったものを、「正解のない問いに立ち向かうための自分だけの武器」であると感じるようなサービスを展開したいと考え、ありたい姿として、「答えの見えない問いに直面しており、その原因または解決法が分からない人に、考える手段を」提供したいと考えた。

4.戦略の概要
ありたい姿を目指すためには3つの変数を考える必要がある。
一つ目は製品・市場ポートフォリオ(誰に何を売るか)である。製品ポートフォリオでは、以前から行われていた文房具の小売業に加え、思いを形にする表現媒体制作支援を中核事業。その補完事業としてお悩みBOX、竹花便り、ペンストーリー、絵本ワークショップを設定した。市場ポートフォリオでは、直面している問題の原因がわからない人、その原因に対処する適切な方法が分からない人と設定した。

二つ目は、ビジネスシステム(どんな仕事の仕組みにするか)の策定である。初めに絵本ワークショップ、お悩みBOX、竹花便り、売り上げのデータ化を行う。次に顧客のペンにまつわるストーリーの紹介、ギフト用ペンの取り組みを行う。最終的に顧客の簡単に伝えられない思いにじっくりと向き合い、丁寧に表現した本、絵、ロードマップといった表現媒体を制作し相手に伝える、思いを形にする表現媒体制作支援を行う。

三つ目は、経営資源ポートフォリオ(どんな能力・資源を自分でもつか)だ。ヒト・モノ・カネ・見えざる資産の4つに大別される。ヒトには、表現媒体制作支援を行う竹花様のスタッフ。モノでは売り上げのデータ化に必要なシステム、絵本ワークショップや表現媒体制作で使用する資材が当てはまる。見えざる資産とは、サービス提供のためのノウハウや技術、信頼やブランドなどの「情報」のような性質を持った目に見えない資源のことだ。顧客の視点に立ち、情報を把握する共感性、情報を適切な形で認識する客観性、理屈や根拠に基づいて結論を導き出す論理性、これらの見えざる資産の蓄積を意図した戦略を考えていく。

現状からありたい姿に向かうための具体的な変革のシナリオを考える。

戦略の最初の一歩として、お悩みBOX、竹花便り、絵本ワークショップ、売り上げのデータ化を行う。

お悩みBOXは、文房具の試し書きコーナー付近に常時設置し、顧客の些細な悩みを募集し、竹花様が回答し、店内に掲示する。

竹花だよりでは、月に一回程度のペースで、竹花様の社員さんが思っていることを書いたお便りを作成する。主にお悩みBOXで届いたお悩みに対する回答を想定しており、いくつかのお悩みをピックアップし、答えに至るまでの思考過程の解説し、わかりやすくまとめる。無料で、商品を買ってくれた顧客にレジで渡すことを想定した。

絵本ワークショップでは二階のフリースペースを利用し、絵本制作意欲のある人に向けた絵本制作の機会と手段の提供を行う。まず、白紙の絵本を仕入れ、絵葉書を描き販売している社長が絵の講師を担当しながら顧客が同社の文房具を使用して自由に絵本を制作する。
売上のデータ化では、現在社員の感覚で行われている需要の把握及び予測をデータによる根拠に基づいたものにしていく。例としては、配置方法などにパターンを用意し、最も売り上げに影響する配置方法を考え、需要の限りなく少ない商品の見直しなどが挙げられる。

ニーズの変化を見越した展開として二の矢・三の矢というつぎの攻め手を準備しておくことが大切であり、二の矢の取り組みを以下のように設定した。
よく来店される顧客層の中から、文房具に思い入れのある人の文房具に対する思いを取材し、記事にまとめる。
二の矢の二つ目の取り組みとして、特別な意味を込めたプレゼントをあげたい人に対して、ヒアリングをもとに、ペンを通じて伝えたい気持ちを一緒に考えることを付加価値とした、ギフト用のペンの販売を行う。具体的にはペンの選定、気持ちをかいたギフトカードの作成、ペンへの名入れなどを行う。

これまでの最初の一歩、2の矢を踏まえ、十分な見えざる資産が蓄積されたことを前提に、中核事業として、思いを形にする表現媒体制作支援を行う。サービスの流れは以下の通りである。顧客への初回ヒアリングを行い、伝えたい思いを生み出す源泉となっている問題を把握し、顧客がサービスを通して使用し続けるペンを選ぶ。次に竹花様が伝えたい思いについての質問用紙を作成し、顧客に回答してもらい、その質問用紙を基にした思いのヒアリングを竹花様が行い、ヒアリングのフィードバックをもとに顧客が伝えたい内容を決める。そして、表現媒体を確定し制作する。サービスの実施期間は一ヵ月程度を想定している。

5.まとめ
今回私たちは顧客に「文房具が欲しい」と思ってもらうきっかけとして、文房具をただ書くための道具ではなく、自分の思考を手助けする道具として提供したいと考え、そのために展開1、2を踏まえ、思いを形にする表現媒体の制作をしようと考えた。

この度の最終発表においても、竹花社長をはじめ多くの従業員の方にご対応をいただき、ありがとうございました。また、竹花の皆様には、今後の事業を展開していくうえで、以下のコメントを頂戴しました。併せて御礼を申し上げます。

・顧客に対する取り組みの提案は新鮮だった。
・お客さんへのこともっと考えたいと思った。
・竹花様の取り組みとしてお絵描きコーナーを実施しており、子供から大人まで人気があり、今回提案した取り組みはその延長で似ているところがある。
・今回の提案から直接顧客にアプローチできるtoC事業は大切であり進めていきたいが、本業はtoBであり、スタッフの人数等を考慮すると厳しいのが現状。
・商品を購入する際に最後ではなく最初に来て貰えるお店になってもらいたいのでこのような提案はありがたい。

発表後の集合写真です。発表内容についての建設的なコメントとともに、その内容を踏まえた今後の事業展開の方向についてお話いただきました。改めて御礼を申し上げます。

当日の様子は、同社の下記のブログやインスタグラムでも情報発信をいただきました。
改めて竹花様、ありがとうございました。

関連リンク

教員紹介

教授 / 学部長

森 俊也

モリ シュンヤ

所属

企業情報学部