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学長コラムNo.26
課題解決型学習(PBL)

課題を見つけその解決を通して学ぶ課題解決型学習(PBL;Project-Based Learning)が注目を浴びている。本学では地域協働型教育と呼び、主にゼミナール科目としてカリキュラム体系の大きな部分を占めている。そこでは必要な知識、技能を総動員して課題発見・解決を目指すことになる。そのプロセスは、大きく二つに分けられる。

一つ目は、課題を発見するプロセスである。課題とは何か。本学の森俊也教授によると「こうありたい」という姿と現実の間にあるギャップを明らかにすれば、おのずと課題が見えてくるという。従って課題を探すというよりは、「こうありたい」という状態を思い描くことが大切である。「こうありたい」を様々な角度から分析し、現実との違いを明らかにすれば、そこに潜む課題が見えてくる。学生はこのプロセスを、課題を抱えている関係者(そこに暮らす住民、企業で働く人、自治体の行政担当等)と話し合いを深めることで、明らかにしていく。この過程では、どう話し合いを進めていけばよいかコミュニケーション力が求められ、また相手が何を言おうとしているのかを理解する理解力も必要となる。「なぜそんなことを言うのか」その言葉から心の内を想像する力は、普段から相手に興味を持ち相手を思いやる力を鍛えておくことに繋がる。さらに物事を論理的に組み立て、課題を分析する分析力も必要である。これらの能力は、社会に出て実際に働くときに最も重要な力となる。

二つ目は、課題を解決するプロセスである。課題を体系化して解決するターゲットを具体化していく。どんな切り口でターゲットを具体化していくのか、学生は関係者たちとよく話し合いをしなければならない。その際、様々な意見が出てきて、場合によっては全く反対方向を向いた意見も出てくる可能性もある。それぞれの意見の背景を明らかにしながら、課題解決の方向性を探っていく。ここには、チームをリードする指導力が求められる。またリーダーはその人間性が問われる。「あの人が言うのなら、そこに従おう。」と言わしめる人間力が必要である。これはそう簡単に手に入れることはできない。普段からの行動を相手は見ている。自分の損得で判断せず、相手のために何かをしてやろう、相手に尽くそうと思うマインドが必ず必要である。逆に相手の意見を尊重する協調性も同時に必要である。もう一つ大きな視点は、課題を解決するための具体的なアイディアの創出である。そのためには、創造する力と普段から様々な課題解決のためのアイディアを自分の引き出しにしまっておく癖をつけることが重要である。

上述の二つのプロセスは、課題発見・解決において必ず踏むプロセスであり、実施することにより上述の力の鍛錬に繋がり学修効果がある。しかし、これだけで課題発見・解決が実現できるものではない。専門的知識の活用が不可欠である。学生は、別途専門基礎科目、専門科目群を通し専門知識を体系的に学んでいる。文系の課題に対しては、人間科学、社会学、経営学、データサイエンス等の専門科目群が該当する。ゼミナール科目では、これらの専門的知識をいかに活用するかによって課題解決の深さ、程度が変わってくる。そしてこのプロセスを経験することによって専門知識の使い方を学び、専門的知識を備えた学生として大きく成長する。筆者は理系であったので、企業の研究活動においては機械工学を中心に課題発見・解決を進めていった。つまり、専門的知識を持った人材としてその方向から深く切り込んでいくことによってより高い解決が実現できる経験を積んだ。この場合、課題解決のためには当然他の専門的知識を持った人と協働していかなければならない。周りの人たちとのチームプレーの必要性を強く感じた。その他、PBLを進めるためには、指導教員やその他のPBLをリードする中心的な人材が不可欠である。いくら優秀な学生が集まってもPBLを動かしていくことはできない。その課題について詳しいか、PBLに精通しているリーダーもまた欠かせない。

桔梗(青色の中に白の花びらがあった)自宅にて

課題を発見し、解決していくプロセスを学ぶことは、対象を掘り下げ真の課題発見・解決に到達する論理の構築力、様々な人とのコミュニケーション力、チームをリードする指導力、さらには人間力などが養われ、社会人として必要とされる能力が身につくほか、専門的知識の応用力も鍛えられる。ただこれらは、通り一遍の体験だけでは、真の力とはならない。ある程度時間をかけなければならない。一度計画を立て実行し、思うようにいかない失敗を経験し、失敗の原因を明らかにし、新たな計画を立て実行することによって一歩、二歩前進する、その経験を積むことが最も重要だと筆者は考える。カリキュラムの中で年次を跨ぐゼミナール科目を配置するカリキュラム体系を作ること、長期的ルーブリックを用いて到達度を本人と教員で評価・共有する評価法を導入することも大切である。これによって、学生は成長が実感できる。