NHK BS4Kで「街角ピアノ」という番組をやっていた。土曜日の朝7時30分から8時15分までであった。駅ナカにグランドピアノを置き、通りがかりの人が好き勝手にピアノを弾き、それを映像として編集し放映するものである。このようなピアノは世界中の至る所に設置されており、日本でも駅ナカだけではなく商業施設の片隅や待合場所などでもよく見る光景である。従って、初めのうちはただなんとなく映像を眺めていた。場面はヨーロッパの大都市にある主要駅の中央付近であった。大勢の人が駅を利用し、時間を気にしながらせわしなく往来している。その一角にグランドピアノがデンとして置かれていた。「ご自由にお弾きください。」と書かれていた。設置者は様々であるが今回はその鉄道会社自身が提供していた。それをNHKが固定のTVカメラを複数台セットし、演奏者の表情を色々な角度から撮影している。もちろん撮影スタッフは誰もいない。
このような状態でピアノを弾くとなるとやはり演奏に自信がある人達である。ある一人の老人がやってきてピアノを弾きだした。若い頃に独学でピアノを学び、それ以来ピアノを弾いているという。ここからは編集が行われていて、おそらくピアノを弾き終えた後、後ろからスタッフが出てきてピアノにまつわる話をヒアリングしたのだろう。それが編集によって演奏と同時に字幕で説明されている。ピアノに対する思いが演奏と同時に字幕で表れるので、見ていてその人の気持ちを理解しながら演奏を聴くことができる。老人の人生が語られ、その中で如何にピアノが特別なものか、ピアノを弾くことによって色々な苦難を乗り越えることができたと老人は言う。様々な経験を通して語られる優しい音色である。続いては10代の若者のカップルが二人で弾きだした。どちらかというと女性がリードしている。男性にあれこれ指示をして女性はノリノリで弾く、男性はそれに合わせる。音楽学校に通うカップルとのこと。若さがあり素直で実に軽やかな演奏であった。今度は南米から移住してきた若い男性が弾きだした。曲は様々であるが、聞いたことがある曲であった。貧しい国を離れここで生きていくという覚悟を語っていた。でも本人は明るく、「頑張れ!」と応援したくなる気分になった。次は、30代ぐらいの男性が弾きだすと、若い女性が自分のもっているヴァイオリンを持ち出し、演奏に加わってきた。もちろん初対面のようであったが、お互いに音楽を学んできた人のようで、いくつか合図で確認すると実に見事な演奏が始まった。往来している人達は足を止め聞き入る。こんなに完成度が高い演奏が駅ナカでしかも目の前で聞けるなんて、びっくりした様子であった。演奏者は満足した様子でお互いに笑顔で聴衆に挨拶しながら別れていった。これは全体のほんの一部でまだまだ続く。
紫陽花 黄色がかっていて綺麗だった。
このような様々な人達がピアノに集まり、思いを込めてピアノを弾く。演奏を終えたときピアノに纏わる話をそれぞれがする。実に色々な関わりがあることが分かるが、共通して言えることは、落ち込んだときにピアノが助けてくれ、気分が落ち着き、活力がわいてくると言うことだった。人種や性別などは全く関係がなく一人の人間として共通なものを感じた。また聴衆の動きを見ていてもどこでも同じであった。必ず遠巻きで半分聞いているようなふりをする。全く無関心で通り過ぎる人もたくさんいる。そうかと思うと近くに寄ってきて真剣に聞く人もいる。演奏が終わると話しかける。子供が軽快なリズムに合わせて踊り出す姿もあり、とても可愛らしい。雑踏を背景に一台のピアノが人間模様を創り出す。緻密に計画された番組制作で実に見事であった。本番組はシリーズものとして以前制作されたもので、筆者はその再放送をみた。