先日、本学の非常勤講師を務められている山城吉道氏と話す機会があった。山城氏は、長年日本銀行に勤められていた。現在は、全国信用協同組合連合会業務統括部副部長の職にある。山城氏は、本学で科目「職業観養成特別講義A」を担当していただいている。本講義は、長野県金融広報委員会(事務局:日本銀行長野事務所内)との連携・協力により開講される講座であり、各分野の専門家をゲスト講師としてお招きする、オムニバス形式の講義である。シラバスによると、「今日において金融は人々の生活に欠くことができないシステムになっているにもかかわらず、特に若年層の金融に対する理解度はそれほど高くない。講義を通じて金融が日々の生活や将来の生活にどのように関わっているのか理解し、自身のライフプランを描けるようになることを目的とする。具体的には、生活においてどのようなお金が必要となるのかといった身近な内容から、経済・財政に関する基礎知識、各種金融商品の理解、トラブルへの対処方法といったトピックを総合的に理解することで、金融リテラシー(金融に関する正確な知識と的確な選択・判断力)を身につけることを目指す。さらに、ライフプランを考え金融業や関連する職業に関する理解も併せて深めることなどにより、自らのキャリア形成についても考察し、職業観を養成していく。」と書かれている。
かつては企業等に就職すると仕事が与えられ、それをしっかりこなせば、安定した給料がもらえていた。会社は安定していてそこでの雇用が約束され且つ昇給も見通せて、お金についてあまり心配することはなかった。しかし現在は全く違ってきている。今は過去の実績をもとに将来を予測することが困難な時代に入ってきている。世界経済が政治情勢の影響を受け目まぐるしく変化していく。企業はいつどうなるかわからない。そんな中で生活していかなければならない、自分自身で経済の変化を予測し、適切に対処していかなければならない。ここにAIが登場しさらに将来が見通せなくなってきている。もちろん悪いことばかりではなく、自身がやりたいことをやっていけるチャンスもたくさんあり、積極的にチャレンジできる環境もできてきている。そんな中で、この授業は、経済・財政を考えながら、金融リテラシーを身につけ積極的に生きていく術を学ぶ現代にピッタリの授業である。
こんな話をしながら、現在日本の製造業が置かれている立場を議論した。高度成長が終わり、日本の製造業はコスト低減のために安い労働賃金を求めて中国、台湾、東南アジアへ進出していった。地理的にも近かったので、多くの企業がこれに従った。製造業を生業としている立場に立つともっともな話に聞こえる。しかし、その結果、現地では様々な技術発展が起こり、いまや日本のものづくりと等しいかそれ以上のレベルになってきた。物価や賃金も上昇し、安い労働力のメリットはなくなってきた。むしろ海外のほうが、労働賃金が高くなり、日本に労働力を求めるようになってきた。しかし、海外から見て日本への魅力は感じられなくなっていた。それはなぜかというと日本は生産性を上げるために安い労働力だけを求めていて、生産性を上げるための新たな技術革新や新しいクリエイティブなビジネスモデル開発などはあまり行われてこなかったのである。だから日本のGDPは横ばいで、他国に比べて圧倒的に開きが生じた。これが高度成長後の失われた30年の歴史だと山城氏は言う。
(今年のつつじは花と同時に葉っぱが出てあまり綺麗ではない)
それではこれから日本はどうしなければならないかというと、日本製品の信頼性は抜群であり、そこにはものづくりのこだわりが至るところにあふれており、この日本人の特性を生かした製品開発、ものづくりを今後していくべきだと考える。これからは、従来の発想にとらわれない若い力が必要で、技術やビジネスイノベーションが叫ばれることに繋がっていく。大学では、起業家マインド教育をもっと強く推し進めていかなければならない。大学に課せられた大きなミッションであり、我々はこのことを強く認識し教育を進める必要がある。
最近、オリンピックでの日本の若い選手の活躍、アニメや音楽において世界で注目されるクリエイティブな活動を見ていると、何か一本日本人の共通の力を感じている。