現在EXPO 2025 大阪・関西万博が大阪で開催されている。そこでは、持続可能な開発目標(SDGs)達成への貢献が謳われている。本学企業情報学部の市川文彦教授が指導する市川ゼミは、5月7日スイスパビリオンにおいて、「環境向上のための国際環境学生会議 The Greener Global Youth Session」を企画し参加した。日本側は本学学生を中心に長野県上田高等学校生徒とその卒業生、信州大学繊維学部生が日本チームを組みプレゼンに参加し、スイスの若者が集まって活動している“1 Million Youth Actions Challenge ”(1MYAC)のメンバーと対話する方式(オンライン)で会議が行われた。この会議の開催は、大阪・関西万博の共通テーマが ”いのち輝く未来社会のデザイン”であり、その具体的なイベントとして、本学市川教授が本学ゼミ生の企画提案をもとにスイス政府開発協力庁、同外務省との全面的な連携協力によって実施されたものである。学生主催の環境国際会議であり、市川ゼミが仲立ちとなってスイスの学生や若者とSDGsを進めていく具体的な考え方、提案について意見交換が行われた。
市川ゼミ4年生・石井航太郎君と2年生・鈴木裕也君が中心となった日本チームは、“Environmental Realities & Everyday Actions in Japan”と題して発表した。SDGsに関しては、世界中様々な場所で活動が行われているが、まだまだ意識の高い人が中心で、あらゆる人が参加する状態にはなっていない。誰でもが参加できるような活動にするにはどうしたらよいかの課題提起をし、事例として、ペットボトルを集めるとその量に応じて長野県上田市を走る別所線の電車に乗れるアイデアを発表した。ペットボトル回収場所はスマホでチェックできる。一見ペットボトル回収はすでに行われており、どこが特徴なのか分かりづらいと感じる人は多いかもしれないが、環境活動は、無報酬でやるのではなく活動することのメリットが実感できるような状態にすることが、最も大切だということを提案している。この考え方が参加者のすそ野を広げやがて世界中誰でも活動に参加する状態が実現できる事例として強調している。またペットボトルは回収されてもペットボトルとしてリサイクルされているのはわずかであるというのが現状である。従って、回収場所を指定し、そこに集められたペットボトルは特定のペットボトルリサイクル業者が回収するようにし、収集コストを抑え確実なリサイクルにつなげるシステムを提案した。この方式はバスや他の交通機関へも拡大できる。また、自転車等のペダルをこぐなど個人の運動によって発電し、蓄電池にためることによって電気として利用する提案もされた。これもアイデアそのものは画期的とは言えないが、個人の運動による健康増進と発電を組み合わせた身近なアイデアであり、そのような活動は世界的に広げやすく、大きなインパクトのあるシステムに成長できることを提案した。これらの提案の狙いは資源回収への特典付与や健康など自らの関心事と環境負荷逓減を繋げることで、人々の自発的行動をとる仕掛けを創ることである。一方スイスチームは、SDGsを発展途上国に広める活動を報告した。意見交換では、お互いの活動を尊重し、有益なアドバイス、提案がなされたとのことである。
会議に参加した石井君、鈴木君は以下のような感想を述べている。石井君は、私との面談の中で会議に参加することには不安を感じていたが、実際会議に参加すると何とかなるもので、参加して良かったとの感想を述べた。そしてスイスの学生は自分達が考えている以上に、SDGs達成に対する危機感が強いと感じたそうだ。またこの活動をグローバルに考えていて、アフリカなどの様々な国への展開に力を入れている様子が見て取れたと言っていた。鈴木君は私との面談に参加できなかったので、文章で報告してくれた。それによると、「スイス館での、報告と議論で自分が気付いたことは、スイスの若者グループは身近な環境問題を、世界規模での地球温暖化の一現象として捉えていること。そのために、スイスや日本での環境問題への取り組みも、グローバルに世界各地と連携して対処していくべきと考えていること、です。私たちは先進国側の責任として、今後、経済成長が本格化する発展途上国の地球温暖化対策を、途上国側と連携して、様々な利害関係も議論しながら進めていくべきであることを、スイス側、日本側で共有できた点は大きな成果であると感じた。ゼミ生としての気付き、収穫を感じました。またスイス側は、途上国における安全な飲料水供給の確保のための行動を企画していることも分かりました。我々、長野大学の報告、他の日本側の短い報告は、みな日常生活の工夫から、実践的に反復する行動から、結果として、地球環境の向上に繋がる方法を提起しました。これらの論点へは、スイスの若者グループも関心を示して、質問などで尋ねてくれました。」と述べている。なお、市川ゼミでは、万博会期中の初秋9月に、万博2025・オーストラリア館で、日豪学生環境会議を、スイス館に続く第2弾として開催する予定である。
本学のゼミ活動の国際交流の事例を紹介したが、各教員が様々な視点でゼミ活動を進めており、本学の学生が主体的に学ぶ特徴ある教育プログラムであると感じている。今後も学長コラムの中でゼミ活動の成果事例を発信していく。

