1月28日、本学リブロホールにおいて「コミュニティ・スクール シンポジウム CS決戦 山口VS長野」が開催された。いささか勇ましいテーマであるが、山口と長野のコミュニティ・スクール(CS)でのそれぞれの特徴を話し合い、良いところをお互いに取り入れ、課題については改善していくことを共有するシンポジウムである。対面とオンラインのハイブリットで行った。ハイブリットの場合、音声が聞きづらいケースがあるが、今回は専門家に入ってもらい全く違和感がなく進行した。参加者は、対面とオンライン合わせて200名超(一つのオンラインサイトで複数名参加している)であり、関心の高さが見て取れた。ちなみにオンライン参加は全国64か所であった。本学は会場校として企画・実行に携わった。対談、パネルディスカッションのファシリテーターは本学の早坂淳教授。
文科省によると、CSとは学校運営協議会を設置した学校のことであり、学校と地域住民等が力を合わせて学校の運営に取り組むことが可能となる「地域とともにある学校」への転換を図るための有効な仕組みと定義されている。主に小学校、中学校が対象で、従来の教員による教育から、教員だけではなく地域住民も教育に携わる新しい仕組みを目指している。住民が学校から依頼されて行う「お手伝い」ではなく、教員と住民が対等の立場で子供の教育を担うものである。
山口県は、学校運営協議会がすべての公立学校(幼・小・中・高・特別支援学校)に取り入れられていて導入率が実質100%とのことである。一方長野県は、導入率が約21%と低く全国で見るとほぼ最下位である。この違いはどこにあるか関係者が集まって議論するのが今回のシンポジウムである。長野県が低いから駄目であるということではないらしい。長野県CSアドバイザー・上田市立北小学校地域コーディネーターの伴美佐子氏から長野県でも地域住民が学校教育に様々な方法で貢献しているという報告があった。ただしこの場合、熱心な人に依存し、その人がいなくなると活動が衰退してしまうという危険性がある。シンポジウムでは、学校運営協議会制度を導入するメリットは何かそこの話し合いになった。
山口から参加していただいた文部科学省CSマイスター、下関市立大学経済学部特任教授の小西哲也氏から学校運営協議会制度とは何かその特徴を分かり易く説明していただいた。学校運営協議会制度の導入を推進する際の、一番の難しさは「学校をこれ以上多忙化させるな」という学校や教育委員会からの抵抗だった。確かに教員は多忙であり何か新しい提案があるとまず拒否反応が起こる。もっともなことだと感じる。しかし、小西氏はデメリットを上回るメリットがあることを強調した。まず学校運営協議会があることで地域と学校がともに当事者性を高めていけると述べている。やはり組織として位置づけられるとそこに参加する意識が変わってくるのである。また、運営と地域貢献を学校運営協議会で支えることが、結果として「信頼される学校づくり」に繋がっていく。地域が学校運営の当事者になってもらうことが大きな狙いである。学校運営協議会制度を導入すれば、当然教員の業務は増える。しかし、学校運営協議会制度による成果は、教員の働き甲斐ややりがいに繋がり、負担感が充実感に変わっていく。学級便りの印刷や配布等の様々な業務を地域とともに行うことで業務の削減もできる。

一方、地域の人たちは、子供たちに直接触れることになり、親と子供の関係ではなく、友達のような関係が生まれる。子供たちは素直な気持ちを伝え、地域の人たちは、それが今までにない新鮮な体験、感情として受け止める。そして、子供の成長を肌で感じ教育に携わる面白さを見つけることになる。学校教育を進めていくと子供たちの将来環境に責任感を感じ、その地域の将来像を本気で考えるようになる。ここが最も重要なポイントである。停滞している我が地域を活性化させようと学校が中心になって考えるのである。これがまさに新しい教育であり、まちづくりである。
今回このシンポジウムに参加して、これからの教育の方向性を勉強することができた。教科書に沿って知識を教えるスタイルでは、これからの子供たちに必要な能力が養われない。様々なことを俯瞰して考える能力が子供たちにも必要である。大学教育は、そのような環境で学んできた子供たちがいずれ入学してくる。この様な教育の変化をしっかりと捉え、大学の教育体系を作っていかなければならない。本学の特徴である「学生の主体的な学び教育」にシームレスにつながるよう常にカリキュラム体系をチェックする。