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学長コラムNo.8
障害者の学びの支援推進事業【2024年度カレッジ長大】

12月15日、障害者の学びの支援推進事業【2024年度カレッジ長大】の成果発表会が本学のリブロホールで行われた。本事業は、文部科学省「学校卒業後における障害者の学びの支援推進事業」であり、本学は昨年度に続き採択され、実施したものである。知的障害者を対象に、地域における持続可能な学びの支援に関する実践研究を行うことが目的である。知的障害のある人達は、18歳までは特別支援学校等で教育を受けることができる。しかし、卒業後は就職や障害福祉サービスを利用する者が多い一方、中には家に引きこもりの者もいる。また、卒業後の学びの仕組みがほぼないのが現状である。

改正障害者差別解消法により、2024年4月1日より「合理的配慮」の提供が義務化され、障害者の学びに関して教育を希望する障害者をどのように支えていくべきか、様々な角度から検討していかなければならない。【2024年度カレッジ長大】は、本学で試行する知的障害者のための教育プログラムについて、実践を通してその利点、課題を抽出するものである。今年度の受講者は16名であり、昨年度に引き続き受講した者は8名であった。年齢層は幅広く、プログラムは7月から始まり、12月まで全8回の開講であった。各回には、理科的な学び、演劇体験、鑑賞型対話等の内容が組まれていたが、最も興味があったのは、本学の大学祭への参加である。初めて大学祭に参加した人にとっては、見るものが新鮮で、刺激的であったようだ。

最終回は、学びにかかる成果発表として、それぞれ一人ずつ参加しての感想や自分の好きなものを発表した。みんな緊張して発表したが、発表が終わったときには、笑顔があふれていた。多くの受講者からは、大学で学ぶことの体験を通し、大学を身近に感じられる存在となり、来年も受講の機会があれば参加したいと言っていた。発表で最も印象的であったのは、今回参加したメンバーの様子をカラフルな折り紙で表現し、明るく元気で学び、これからも一緒に仲間として活動したいと力強いメッセージがあったことである。最後に、筆者から修了証書を皆さん一人一人に手渡した。緊張感や安堵感が入り交じった複雑な感情が読み取れた。大学で学ぶ目標の達成感が、それぞれの自信に繋がってほしいと願っている。

カレッジ長大の特徴の一つとして、社会福祉学部、環境ツーリズム学部の学生が、サポーター係として、担当の受講者に寄り添う形を取っている。障害者とこんなに密接に付き合うのは初めての学生もおり、最初のうちは戸惑いもあったことと思う。相手の立場に立って、コミュニケーションを取っていく中で打ち解け、心が通い合う関係になっていった。その様子は、傍から見ていてもよく分かった。成果発表会では、受講者と一緒にステージに立ち、受講者が発表しやすいように相手の反応を見ながら、細かくサポートしていた。学生は今回の教育実践を通し障害や障害のある人に触れることができた。教育的観点からすると座学で教えられることの遙か数十倍も学修できたのではないかと思う。これからの教育の在り方に大きな示唆を与えている。最終回が終わり、学生達は受講生と別れる際、片隅でお互いにハグし涙を流していたのが印象的である。

秋田の冬(かつての筆者の住まい)