共創情報科学部(仮称)設置準備室の藤田講師の研究成果が、「PLOS ONE」(2025年1月15日付)にオンライン掲載されました。
論文名
Comparison of greenhouse gas emissions associated with the construction of timber, concrete, and steel check dams in Akita, Japan: An input-output analysis
URL: https://doi.org/10.1371/journal.pone.0316153
研究体制
本研究は,ヤンマー資源循環支援機構 (KI0242055) の支援を受けて行われました。
研究成果
地球温暖化の緩和や地域経済の活性化の観点から,これまでコンクリート製や鋼製で建設されていた治山ダムの木製代替が期待されています。しかし,木製治山ダムは,設置条件が満たされていても,コストが高いため,工種選定の際に避けられてしまうことが多くあります。そこで,本研究では,治山ダム建設に伴う温室効果ガス排出量を設計時点で評価し,他工種と比較することで,コスト以外の木製の付加価値を定量的に評価することを目的としました。本研究では,治山ダムの設計書を参考に,産業連関表や3EID[1]といったオープンデータのみを用いて温室効果ガス排出量を評価しました。その結果,コンクリート製を木製代替すると51 %, 鋼製を木製代替すると 33%の温室効果ガス排出量削減効果があることが示されました。しかし,生コンクリート生産に伴うセメント製造技術が向上した場合,木製の温室効果ガス排出量の優位性は失われる可能性が示されました。本研究は構造物の設計段階で温室効果ガス排出量の評価が可能であることを示し,工種選定の際に,温室効果ガス排出量という付加価値も評価対象とする重要性を示しました。
[1] Embodied Energy and Emission Intensity Data for Japan Using Input-Output Tables の略で,“環境負荷原単位”を収録したデータブックのことです。https://www.cger.nies.go.jp/publications/report/d031/jpn/index_j.htm
木製治山ダム建設の温室効果ガス削減効果
今後の展開
本研究で得られた結果は,「木材を利用するから温室効果ガスの排出量を削減できる」わけではないことを定量的に示しました。セメント製造技術が向上することで,コンクリート生産に伴う温室効果ガス排出量の削減は飛躍的に進歩しています。持続可能な森林経営を行うことによる木材利用の重要性が増しています。