山間地等の傾斜地に作られている棚田は日本の原風景とも言えるものですが、こうした水田を中心とした二次的自然で構成される里山は我が国の生物多様性保全において極めて重要な生態系の一つとなっています。一方で、近年では稲作を取り巻く社会情勢の変化や農業者の高齢化に伴い耕作放棄地が拡大しており、棚田のような効率的耕作に適さない条件不利地においてその進行はより顕著となっています。
上田市稲倉地区には、約780枚の水田からなる棚田が広がっており、農業者に加え地域ボランティアや棚田オーナー制度など多くの方の尽力によってその見事な景観が維持されています。また、耕作放棄地を利用したビオトープも造成されており、地域の小学生等に貴重な学びの場を提供しています。満尾ゼミでは、棚田景観における水生生物群集の構造解明と造成されたビオトープの評価のため、定期的に現地調査を行っています。これまでの調査から、希少種を含む多様な生物の生息が明らかになりました。