社会福祉学部の専門基礎科目「社会福祉の視点と方法」(主担当教員:鈴木 忠義)の第6回授業(2026年5月22日)で、小舘尚文先生による特別講義を開催しました。
小舘先生は、アイルランド国立大学ダブリン校(UCD)社会科学・法学部 社会政策・ソーシャルワーク・社会正義学科の教授として、日本とヨーロッパを中心とする比較医療・福祉政策などの研究に取り組み、生活支援におけるテクノロジーの活用に関する研究プロジェクトに従事されています。
特別講義では、「社会政策」・「福祉国家」の概念、アイルランドの社会政策・福祉、「ロボットとケア~ケアを担う新たな主体となりうるのか?〜」について、先生自身の経験や研究成果を交えて話されました。講義のまとめとして、「見えないもの(例えば、ケアの質)を『見える化』して、複合的に理解し、評価するというスキルは、 AI/ロボットも参入する社会福祉(ケアの分野)で、今後さらに必要になってくる」と述べられました。
この日の授業は社会福祉学部学生(主に1年生)176名が聴講しました。グローバルな視点からとらえる「福祉」についての講義に、学生は熱心に聴き入っていました。
【受講した学生の感想から】
「社会福祉学部の学生として、海外で研究をされている先生のお話を聞けるとても貴重な機会だった。(中略)これから社会福祉の現場で働いていくことを考えたときに、自分の国だけでなく他の国のスタイルについて学ぶことで支援に対する捉え方や意識の幅が広がると感じた。また、先生の『比較』への考え方をお聞きしてとても感銘を受けた。ただ単に何でも比べればいいという訳ではなく、個性だからいい、ちがうからいいというものもたくさんあると学んだ。他のテーマへの学習にもたくさん生かしていきたい。」
「今回の特別講義を受講して、私の中の社会福祉というもののイメージだったり考え方がより深まったように思います。(中略)この講義を受講しただけでも福祉というものを議論していくためには、世界に見られる福祉の考え方や制度の特色を理解して、改めて目指すべき福祉国家とは何なのか、私たちがすべきことは何なのかを自分なりに考えていく必要があると思うので、これから取り組んでいきたいです。」
「話をしてくれた方は向上心が高く、学び続ける姿勢がとてもかっこいいと思いました。(中略)最近の福祉は範囲が広くなり何が正しいのか正解がなく複雑化する中で、福祉に携わろうとしている身として今後も学び続けることが大事だと思いました。」
「普段は日本の制度や現状ばかりに目を向けがちだったので、これまでにない新しい視点から社会福祉について考えることができ、非常に面白かったです。よく考えてみれば、国ごとに宗教や歴史が違う以上、どの保証制度に重きを置くかも違って当然です。だからこそ、他の国で成功した政策を何でもかんでもそのまま取り入れるのはよくないのだと気づかされました。課題も国によってまちまちであり、その国の文化に適しているかどうかが何より重要なのだと痛感しました。」
「生活の中での違いに気づくこと、現場の中で共通点に気づくこと、そこからさらに違い・個性に気づくというステップは、とても勉強になりました。政策やシステムは、ある側面から・ある一つのデータから批判するのではなく、背景について学び、現場の声を理解し、信頼のできる複数のデータに基づく、多角的な視点を持った批判であるべきことを学びました。ある国・地域の良い点だけを見て短絡的に飛びつくのではなく、良くない面はないか、取りこぼしていることはないかと思考を巡らせること、また、どうしてうまくいったのか、成果が出たのかの、歴史や経済・文化などに始まる固有の要因がないかを考えることが大切なのだと思いました。」
「ソーシャルワーカーは国の制度や政策を学ぶことでクライエントにより良い提案ができるということを再認識した。また国によっても福祉国家に対するニュアンスの違いがことばにあらわれることがとても興味深いと思った。またそこからなぜそのような違いが生まれたのか歴史などを掘り下げていくことでより深い理解につながった。(中略)またテクノロジーの導入もケアをする人の負担を減らし、支援者は人間にしかできないケアを行うことが大切だと感じた。しかしあくまでそのような選択肢を作ることが大切で実践をする際にはきちんと利用者さんの意思を尊重することが重要であると感じた。また、ロボットと人間の関係も国によって違うのも興味深かった。相違点と共通点に着目して調査をすることでより深い理解につながることを実感した。」
「『国や地域によって、誰もが必要としているはずの医療や教育の提供のされ方が異なるのだろう?』という考えについて、国や地域によって差があるのは当然のことだろうと決めつけ、改めて向き合おうとしていなかったことに気づかされました。また、日本には日本の課題を、他の国には他の国の課題をそれぞれ抱えていることが分かりました。他国と比較することで見えてくる現状もあると知り、お互いの国から学び合い、誰もが生きやすい社会福祉の形をつくっていけたら良いと強く思いました。」
「日本には日本の福祉の仕組みがあり、世界中の国にはそれぞれいろいろな福祉の形がある。日本の福祉をよりよいものにしていくためには、今の日本の福祉の在り方と世界の福祉の在り方とを比較し、よいものを参考にして取り入れていくことが重要だと思った。また、少子高齢化や人手不足が深刻な日本社会においてはロボットを活用していくことは必要不可欠だと思った。ただ、ロボットは『うまく活用する』ことが重要であり、今まで人と人とで行っていた支えあいを完全にロボットに任せてはいけないとも感じた。今回の講義を通して『ケア』の感情的な部分はやはり人間にしかできないことで、福祉職はこれからの社会で絶対になくしてはいけない職業だと改めて感じた。」
「アイルランドなどと日本を比較したことで、それぞれの政策の利点や日本の制度の課題が明確になり、日本の制度を相対化して見つめ直す良い機会となったため、自分の視野や考え方を広げることができたと思った。さらに、深刻な人手不足を背景に医療・介護の現場でテクノロジーの導入が進む今だからこそ、支援していく上でケアの根底にある人と人とのつながりを失わず、活用することが求められると考えた。今後はこの国際比較の視点を生かし、誰一人取り残さない社会を実現する方法について学びを通して考え続けていきたいと思った。」
自身の研究関心について語る小舘尚文先生
授業の様子:多くの学生たちが聴講しました
教員紹介
教授 / 学部長
鈴木 忠義
スズキ タダヨシ
所属
社会福祉学部、大学院 総合福祉学研究科
総合福祉学研究科社会福祉学専攻博士前期・後期