上塩尻の蚕種製造民家を見学する
企業情報学部の前川道博研究室は、8月18日、上塩尻自治会、上塩尻今昔の会と協働して「塩尻地区蚕種製造民家群運と文書を見聞する会」を実施しました。蚕種製造の一大中心地であった上塩尻の蚕種製造民家、文書を地元上塩尻の方々に並外れた産業遺産を見聞していただき、未来に向けた保全や活用の一歩を踏み出しました。当日の見聞会はアーバンデータチャレンジ2018の参加イベントとして、地域の様子を「見える化」する情報発信型の地域デジタルアーカイブ活動としても実施しました。
上塩尻には蚕種製造業を営んだ民家や施設が残っている
過去30年近くにわたり、たびたび学術的な調査研究、行政が関わる景観調査等が行われてきました。しかし、結局はそれらが地元の地域づくりには活かされることなく、現在に至ったというのが実情です。今回の見学を通じ、それぞれの家々が江戸期・明治期の蚕種製造民家を改造して、現代の生活ができるように工夫している状況を再確認しました。小さく見れば空家化や更地化は必然として起きてはいますが、大きく見れば先人の文化遺産を活かし、そこに暮らす知恵を持って維持管理する住民の意思・知恵が「蚕種製造民家群」というかけがえのない文化遺産を現代に残す原動力になっていると見ることもできます。
【場所】上田市塩尻地区公民館(集合場所)
【主催】長野大学前川研究室、上塩尻自治会、上塩尻今昔の会
【内容】
・上塩尻の景観と建物を見聞する
見学先:藤本蚕業歴史館、佐藤本家跡、佐藤尾之七旧宅など、北国街道沿いの町並み
・上塩尻に保全されている文書などを見聞する
・意見交換(会場:塩尻地区公民館2階和室)
「塩尻地区の景観・建物・文書をどう保全し活用するか」
【参加者】20名
藤本蚕業歴史館(旧藤本蚕業の蚕種製造施設)を見学する
藤本の蚕室 埋薪(まいしん)と呼ばれる暖房設備に参加者の目線が釘付けになる
佐藤本家跡 著名な蚕種製造家・藤本善右衛門縄葛(つなね)の屋敷跡
佐藤尾之七旧宅(現佐藤修一氏宅) 最も大きな蚕種製造民家の一つ、1896年の外国向け銅版画にも描かれた屋敷
上塩尻文庫蔵 「建屋図面」(明治9年、上塩尻約160戸の屋敷を詳細に調査した図面)などの文書・絵図が残されている。
「建屋図面」の例 デジタルアーカイブ化により地域・建物の詳細な調査が進むことが期待されている
意見交換会 参加者どうしで熱い意見交換が行われました。
前川道博研究室では、地域の諸資源を地域の住民が自律的・分散的に蓄積し発信しあえるメディア環境「信州デジタルコモンズ」を提案しています。その一環で「信州上田シルクロードアーカイブ」(シルクロード長野ネットワーク(代表:前川道博))の一部に塩尻地区蚕種製造民家群に関わるデジタルアーカイブを収録していく予定です。