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教育・研究

稚魚研究から「森里海連環学」へ ー超学際研究を見据える:第7回IFBセミナーの案内:田中 克先生 (京大名誉教授)

【2023.4.28】
第7回長野大学淡水生物学研究所IFBセミナー

日時:2023年5月10日(水) 14:30~16:00
場所:長野大学淡水生物学研究所・会議室(上田市小牧1088)

演者:田中 克先生 (京大名誉教授)
演者略歴:1943年滋賀県生まれ。京都大学名誉教授。
京都大学農学部水産学科に入学し、以降40年間にわたって稚魚の生態や生理に関する研究に取り組む。
2003年ころから「森里海連環学」を提唱し、活動を行う。NPO法人「森は海の恋人」元理事。
演題稚魚研究から「森里海連環学」へ-超学際研究を見据える

定員:【対面】40名程度で事前登録制 (ifb@nagano.ac.jp)
   【オンライン同時配信】登録不要(視聴URL:https://meet.google.com/rhg-yxnr-onv
講演要旨

今に至る子供時代の原体験
 滋賀県大津市、琵琶湖の近くで生れ、小学校高学年時の担任の先生が、自分のクラスの生徒を小さな伝馬船の櫓を操って琵琶湖に連れ出し、産卵のために来遊したホンモロコ成熟親魚を釣り上げたことが、今日に至る原点(原体験)になった。その後の有明海での稚魚研究を通じて、水際が海の命の循環にとって不可欠なエコトーンであることから辿りついた 「森里海」 のつながりは、生れ故郷琵琶湖も全く同様であることに想い至った。

ヒラメの変態はなぜ
 稚魚研究の主な対象の一つであったヒラメは、最も典型的な変態を辿る魚類といえる。現役時代の関心は、どのようなメカニズムで変態が生じるかにあったが、現在のいのちの循環の視点からは、野生の生き物が環境に多様に適応し、より生き残りの確率を高めるための体の構造の作り替えとの見方に至る。同時に、本種の日本海側を中心にした全国ヒラメ稚魚調査から、海の命の循環に、海と陸を巡る水循環を重ね、カギを握る流域の「里」(広義には人の営み)のあり様を問い直す統合学 「森里海連環学」 の発想に至った。

転機となった東日本大震
 2011年3月に宮城県沖で発生した巨大な地震と津波は三陸沿岸域生態系とそれに依拠した地域社会の暮らしを一挙に崩壊させた。巨大地震と津波が及ぼした影響と回復の過程を明らかにするために、できるだけ早くから、森から海までをつないで、総合的な 「気仙沼舞根湾調査」 が全国の多様な研究者の協働の下に震災2か月後に始まり、現在も隔月調査が継続されている。第二期10年の目標は、地震と津波が蘇らせてくれた森(陸)と海の間に位置する塩性湿地の稚魚成育場機能などの自然的ならびに社会的役割の解明にある。

沿岸域をシーカヤックで巡る海遍路
 日本沿岸域の生態系が著しく劣化する現実、津波の被災を受け続けるにもかかわらず海と共に生きる人々の本音の見聞を目的に、カヤックで海辺を辿る 「海遍路」 に参加する機会に恵まれた。水辺を求めるヒラメ稚魚の気持ちに近づく旅でもある。三陸の漁師は笑顔で言う。『ここには 「太平洋銀行」 がある。津波は怖いが逃げるすべを知っている。真面目に働けば負債もいずれ返済して生きていける』 ‟あいだ”としての水際は多くの稚魚にとっても不可欠の意味を持つことを感性から学ぶ 「海遍路」 を続けたい。

湖(海)に始まる稚魚研究は有明海再生への「超学際研究」に向かう
 琵琶湖に生まれ、稚魚研究に40年以上関り、つながりの価値観の再生を目指し、森から海までの繋がりをもとに自然と社会の再生への流れを生み出す統合学 「森里海連環学」 の深化の最終章の舞台は、限りなく豊かな海から瀕死の海に至った有明海の再生に定めつつある。魚の子供と人間の子どたちの未来を重ねて、文理融合ならびに学界と社会の協働による「超学際研究」の展開により、現実問題(水際再生)の解決に貢献する道を拓く。

研究者・学生の皆さまの参加をお待ちしています(20名程度)。
また、関心のありそうな方々への本アナウンスの周知を歓迎いたします。
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