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教育活動の紹介

さまざまな体験型野外実習

  これまで「恵みの森再生プロジェクト」が行ってきた「野生果樹の森林内栽培」、「クヌギ・コナラの環状剥皮(はくひ)(通称:巻き枯らし)」、「森林内の堆肥づくり」、「野鳥のための巣箱かけ」などの特徴的な教育活動をさらに充実させるとともに、以下のような独創的な活動を加えて、教育活動のより一層の充実をはかります。


野生果樹の森林内栽培

身近な森林に自生する野生果樹を見直す

  「恵みの森」では、上田地域の森林に自生している14種類の野生果樹(約180本)を、林の中の空いている場所に自然の分布に近い状態で植栽して、栽培しています。野生果樹とは、森林で普通に見られる樹木のうち、食べられる木の実をつける樹木のことをいいます。

  2007年5月12日には長野大学「恵みの森再生プロジェクト」の発足を記念して植樹祭を開催し、7種類(サルナシ・ナツハゼ・ヤマブドウ・ウワミズザクラ・キハダ・ツノハシバミ・サンショウ)の大型樹木と苗木を植栽しました。また2008年5月10日に開催した第二回目の植樹祭では、8種類(オニグルミ・クリ・トチノキ・ヤマボウシ・ヤマグワ・ナツハゼ・ミツバアケビ・チョウセンゴミシ)の樹木と苗木を植栽しました。いずれの植樹祭も、地元の小学生と社会人の皆さんにご参加いただき、長野大学生と一緒に樹木を植栽しています。

  野生果樹は、林の中のさまざまな環境(林の中、草原、林と草原の境界)に植栽しています。学生は、野外実習の中で、野生果樹の生長や果実の成り具合などを継続的にモニタリング(監視)して、それぞれの種類の野生果樹にとって栽培に適した環境を調査しています。ここで得られたデータは、野生果樹の森林内栽培の手法開発に役立てます。


地元の森林に自生している野生果樹を植える理由

  「恵みの森」で栽培している野生果樹はすべて大学から50㎞圏内の場所から連れて来ています。樹木を移動させる距離を最小限度に留めることによって、「恵みの森」に隣接している森林生態系のかく乱や、そこに自生している樹木の遺伝的多様性のかく乱を防ぐことができます。

2007年5月12日の植樹祭

野生果樹の一種、ナツハゼ

クヌギ・コナラの環状剥皮(はくひ)(通称:巻き枯らし)

身近な森林に新たな価値を生み出す

  「環状剥皮(はくひ)」とは、樹皮の一部分を環状にはがして、樹木を立ったままの状態で枯らす手法をいいます。やがて枯れる幹にキノコの菌を打っておけば「ほだ木」を使わなくても比較的簡単にキノコ栽培が楽しめます。また樹皮をはいだ幹からは樹液が染み出すようになり、カブトムシやクワガタムシなどの昆虫が集まって来ます。
  
  「環状剥皮」は、利用価値を失いつつある身近な森に新たな価値を生み出す「新たな森づくり」になるかもしれません。「恵みの森」では、現代人と森をつなぎ直す効果的な方法と考えて、さまざまな実験を行っています。


キノコ栽培と昆虫採集が楽しめる森づくりのための実験

  上田地域に最適なキノコ栽培の方法を開発するために、樹木に打つキノコの菌の種類や、樹皮をはぐ幹の高さや面積を実験的に変えて、その時のキノコの生産量を比較しています。また、この実験から昆虫を誘引する効果の違いも調査することができます。染み出す樹液の量や昆虫の種類・数を比較して、昆虫が集まりやすい「環状剥皮」の方法を編み出します。

  立ち枯れの樹木を利用する昆虫(カミキリムシの仲間など)や野鳥(キツツキの仲間など)、樹木が枯れることによって明るくなった立ち枯れ木の下の環境を利用して、生育する植物なども調査します。このようなモニタリング調査によって、「環状剥皮」が引き起こす生物多様性の変化を把握することができます。学生は、野外実習の中で、モニタリング調査の方法を学びます。

2007年10月20日の巻き枯らしイベント

環状剥皮を行った樹木に集まるカナブン

昆虫モニタリング

  クヌギとコナラの「環状剥皮(はくひ)(通称:巻き枯らし)」を行って、カブトムシやクワガタムシなどの昆虫が集まる森づくりを行っています。「環状剥皮」とは、樹皮の一部分を環状にはがすことをいいます。樹皮をはいだ幹からは樹液が染み出すようになり、さまざまな昆虫が集まって来ることが予想されます。

  「恵みの森」では、樹皮をはぐ幹の高さや面積を実験的に変えて、染み出す樹液の量や昆虫の種類・数を比較し、昆虫が集まりやすい「環状剥皮」の方法を調査しています。

  2008年8月9日には、昆虫採集の公開イベントを開催し、地元の小学生と社会人と一緒に「環状剥皮」を行った樹木に集まる昆虫のモニタリング調査を行いました。

2008年8月9日の昆虫採集イベント

環状剥皮を行った樹木に集まるカブトムシ

森林内の堆肥づくり

  「恵みの森」では、林の中で堆肥づくりを行っています。林の中に掘った穴に落葉を堆積させて、落葉を発酵させます。できた堆肥は、野生果樹の肥料や家庭菜園の肥料などに使用します。

  また、カブトムシなどの昆虫は落葉が堆積した環境を好み、産卵場所として利用することが予想されます。堆肥づくりは「環状剥皮(はくひ)(通称:巻き枯らし)」を行ったクヌギ・コナラ樹木の隣で行って、樹木に訪れたカブトムシが産卵しやすいように工夫しています。もしかすると、堆肥の中で孵化した成虫がすぐに「環状剥皮」を行った樹木に樹液を吸いに来るかもしれません。

  林の中で落葉をかき取った場所では、土の中で眠っていたタネ(スミレなど)が発芽しやすくなることが知られています。林の中での堆肥づくりは、生物多様性の保全につながる森づくりだといえます。学生は、堆肥づくりや堆肥場に集まる土壌動物(ミミズなど)や中型哺乳類(タヌキやアナグマなど)を調査しています。

2007年12月10日の堆肥づくりの野外実習

堆肥場に訪れたアナグマ

野鳥のための巣箱かけ

  巣箱を利用する野鳥の中には、植物のタネを運んでくれる野鳥や、松枯れを防止してくれる野鳥がいます。「恵みの森」では、森づくりを手伝ってくれる野鳥のために、巣箱を設置します。野外実習では、巣箱の利用状況やヒナの成長を調査しています。

2007年3月8日の巣箱かけイベント

巣箱で子育てをするシジュウカラ

水辺の創出

  森林の保水力と水浄化能力、森林内の水域が生物多様性にもたらす効果を調べる野外実習として、恵みの森内に小規模の池と流れを造成します。池の水質、水域および陸域生物相の変化を定期的にモニタリングして、生態系の変化を追跡していきます。ため池に関する豊富な知識をもつ地域のみなさんのアドバイスを受け、粘土による堤の設置など伝統的なため池づくりの技術を取り入れます。

ため池造成のための掘削作業

完成した小規模のため池

森の中でのコミュニケーション・スキル

  森の恵みを活用した社会福祉専門教育を実施するために、森林を介した多世代間コミュニケーション・スキルの習得を目的としたカリキュラムを展開します。これまでに、「学生作成のネイチャーゲーム」(植物の名前から連想する植物の形や姿をグループのメンバーと話し合いながら、コミュニケーションを図るもの)、「恵みの森」フォトコンテスト(各自で被写体やそのテーマ・メッセージ・物語を決めて写真を撮り、作品に対する感想や意見を交換するもの)、昆虫採集などを試行しています。

  社会福祉学部の教員及び在学生は、社会や福祉に関する知識やスキルを活用しながら、子どもや高齢者、障害児者など多様な世代、心身状況にある人が森の恵みを活用できるようなプログラム開発の視点から、「恵みの森再生プロジェクト」の各種イベントに参画してきました。平成20年度までの取組としては、植樹祭や昆虫採集イベントにおける地域の子ども達のガイド、各種イベントにおけるアイスブレインキングの実施等が挙げられます。今後は、大学近隣地域の小学校校等に加え、障害者福祉施設・事業所との協働によるプログラム開発を目的とした教育活動を展開する予定です。

アイスブレインキング

森からの情報発信

  森林内でのICT技術を活用した情報発信と交流を目的としたカリキュラムを実施します。これまでに、フィールドサーバ(気温、湿度、降雨量、土壌水分などの気象データを継続的にモニターする計測機器。同時にそれらのデータを無線LANを介してインターネットに提供できるサーバー機能付き)設置のための動作確認を行ってきました。この取組みでは、森林内でのICT技術を活用した情報発信と交流、ICT技術による環境教育支援システムの開発などの実践的な学習を行います。

  また、ICT技術による環境教育支援システムの開発を行うために、巣箱の野鳥繁殖状況調査を行う予定です。巣箱に赤外線カメラやネットワークカメラを設置し、リアルタイムで野鳥の子育ての様子を観察できるようなシステムを整備し、また、画像データや観察データを環境教育の教材づくりに役立てるためのカリキュラムを展開する予定です。

フィールドサーバの本体

ウェブカメラで撮影した「恵みの森」の画像